大判例

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大阪高等裁判所 昭和27年(ネ)1112号 判決

控訴代理人は原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は控訴代理人において本件除名の事由が被控訴人主張のとおりであることは争わない。なお地方議会における懲罰は会議の運営に関する議員の非行に限らず広く議員としての義務違反に対して科せられるものであつて、地方議会の議員は公務員として当該地方住民に対し住民全体の奉仕者として良心に従い誠実に職務を行い自己は因より一部特定の者の利益を図つてはならない義務を負担することは憲法第一五条第二項からも明かであつてこの憲法上の義務は当然地方自治法の根本精神に包含されており同法第一三四条第一項はかような全体奉仕義務違反にも及ぶものと解すべきところ、被控訴人は安堵村環境改善事業の施行に関し、村会議員として右事業の予算の議決に関与し、その適正妥当なる事業の執行を監督すべき責務ある議員の義務に違反し、多額の金員を自己の利益のために横領した疑をうけ、昭和二七年九月三〇日起訴せられたもので、被控訴人のかかる不正行為は議員としての全体奉仕義務を怠つたもので、安堵村会会議規則第三八条第一号に違反すると同時に、憲法第一五条第二項及び地方自治法第一三四条第一項に違反するものであるから、被控訴人に懲罰を科したのは当然であつて本件除名の議決は違法でない。また被控訴人の右非行に対し懲罰を科したのは安堵村会会議規則第三八条第一号に違反すると同時に、地方自治法に違反するがためであつて、同法第一三四条第一項にはこの法律に違反した議員に対し議決により懲罰を科することができる旨規定し、この法律は被控訴人の右非行の行われた当時既に実施せられていたものであるから、被控訴人を懲罰するに何等の支障なく、前記会議規則が右非行後に可決制定せられたことは本件除名議決の効力に影響がないと述べた外、原判決事実摘示のとおりであるからここにこれを引用する。

(証拠省略)

三、理  由

被控訴人が控訴議会の議員であつたこと、控訴議会が昭和二七年五月二九日の議会において被控訴人を安堵村会会議規則第三八条第一号、地方自治法第一三五条第一項第四号に該当するものとして除名する旨の議決をなし、同月三一日その旨被控訴人に通告したこと及び右懲罰は被控訴人が昭和二五年五月頃から昭和二六年九月頃まで安堵村大字東安堵北方の大字会計員として在職中右職務上保管中の同大字の環境改善費を横領したとしてなされたことは当事者間に争がない。よつていま仮りに被控訴人に右の如き非行があつたとしてそれが地方議会の懲罰の対象となりうるか否かについて判断するに、地方議会の議員に対する懲罰の対象は地方自治法の規定の趣旨及び議会が議決機関であることの性質に照らし、議員の議会内における議会の円滑な運営を阻害する言動ないし議会の品位を汚しその権威を失墜するような言動及び議員の議会外における言動であつてもそれが直接議会の品位を汚しその権威を失墜するような言動に限られるものと解するを相当とし、縦令議員の議会外における言動が議会の品位を汚しその権威を失墜すると思われる場合であつても、それが議員個人の非行であつて議会自体の被害が間接的である場合、例えば議員の職務外の個人的非行、或は議員がその職務を行うにあたつて収賄等の非行のあつた場合の如きは、当該議員に対する処置は刑法その他刑罰法規に従うの外選挙民の心に委すべきものであつて、議会が懲罰権を以て臨むべきものではない。従つて地方自治法第一三四条第一項及び会議規則に従つて懲罰を科するについては、右の限度を越ゆることが許されないものといわなければならない。安堵村会会議規則第三八条第一号によると、村議会の議員に村会議員たる義務を怠り又は議員たる名誉を失墜する行為のあつた場合は議会により懲罰処分に付するものとするとあるがこの規定を適用するについても右の限度を越ゆることが許されないものであつて、被控訴人の前記非行は安堵村の議会外における行為であつて直接同議会の品位を汚しその権威を失墜する行為ではないので、これを懲罰の対象とすることは許されず、これを対象としてなされた被控訴人に対する本件除名の議決は違法であつて取消を免れない。控訴議会は被控訴人の前記非行は村会議員として地方住民全体の奉仕者としての義務を怠つた場合に該当し、前記会議規則第三八条第一号前段に違反すると同時に、地方自治法第一三四条第一項にいわゆるこの法律に違反した場合に該当するものであつて、本件除名決議は違法でないと主張するけれども、被控訴人の前記非行は大字会計員としての非行であつて村会議員たるの義務を怠つた場合に該当せず、又村会議員としての全体奉仕義務それ自体の違反にも該当しないばかりでなく、仮りに村会議員たるの義務に違反したものとするも、前段認定のとおり議会の懲罰の対象たりえないものであるから、右主張はその理由がない。また仮りに被控訴人の前記非行が村会議員たる名誉を失墜する行為として懲罰の対象たりうるとするも、昭和二七年三月三一日可決制定せられた前記会議規則第三八条第一号は懲罰に関する実体規定であつて、これに遡及効を認むべきものではなく、従つて右規則制定以前に行われた被控訴人の前記非行につき、右規則を適用してなされた本件除名の議決は違法であつて、この点からも取消を免れないものといわなければならない。よつて、これと同旨に出で本件除名の議決を取り消した原判決は相当であつて、本件控訴はその理由がないので民訴第三八四条、第九五条、第八九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 吉村正道 大田外一 金田宇佐夫)

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